平成22年3月9日

ある日、ケン君(仮名)という男の子(小学2年生)が入会しました。可愛らしいお子さんでしたが、ケン君はなかなか、周囲に馴染めませんでした。

ケン君は、技の説明をしている時など、他の皆が静かにしている時に大きな声で静寂を破り、皆の視線を集めます。

二人組みになって稽古を始めると、手を取る稽古で手を引っ込めて取らせないなど、ズルをする事で、その場のイニシアチブを取ろうとします。

が、正面打ちの稽古をすると、どんなに優しく、どんなにゆっくり稽古をしても、相手が何もしないうちから、慌ててあれこれ動いてしまったり、怖がって目を瞑ったりしてしまいます。

もの凄い斬撃が、恐ろしいスピードで飛んでくる、と思ってしまう様でした。

休憩時間に、皆と遊んでいる時にも、他のお子さんからの働きかけに過剰に反応し、すぐに「やめろよ!!」という感じで、お子さん達の輪から離れてしまいます。

ケン君は幼く、また、たいへん怖がりでした。

ある日ケン君は、シュウ君(仮名)という小学1年生の男の子との練習中、大きな声で私を呼びました。

ケン君は、シュウ君を指差し、「先生、ドンッてやった!!」と、私にシュウ君を告発しました。

ケン君は口を真一文字に結び、お前が悪い!と、堂々たる態度でシュウ君を指差し、見据えていました。

が、シュウ君が悪いわけではありませんでした。

ケン君が、その日もちゃんと稽古をしようとせず、しゃべって注意を逸らしたり、なかなか手を取らせなかったりするので、シュウ君は、ちゃんとやれよ、と突っついたのです。

ケン君は、相手が自分の思い通りにならないので、私に相手を告発したのです。

私は、叱りはせずに、大丈夫だから、ちゃんとやりなさい、と稽古を継続させました。

ケン君はなかなか、稽古が出来ませんでしたが、それでも少しずつ、皆と仲良くなっていきました。

そして、月日が経ち、皆とすっかり仲良くなった、ある日の休憩時間、ケン君が久しぶりに、大声で私を呼びました。

ケン君は、皆が悪意で、ケン君をからかっていると訴えました。

が、皆は、ケン君を仲間と認めて、一緒に遊ぼうと誘っているだけでした。ですから私は、ケン君に、それをそのまま伝えました。

すると、その日から、ケン君は変りました。

技の稽古には、ごまかす事なく、真面目に取り組む様になりました。休憩時間には、けっこう際どい遊びでも、安心して楽しむようになりました。

ケン君は、そうなるまでに1年半、かかりました。

ケン君は感受性が高く、想像力が豊かなのだと思います。自分に負けなくなって良かったです。

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