平成22年3月12日

ある日、本会にリョウ君(仮名)という小学1年生の男の子が入会しました。

リョウ君は、ちゃんと稽古をする事がなかなか出来ませんでした。

そして、リョウ君はたいへん攻撃的でした。

合気道の技には、力一杯行うと、たいへん痛い技があります。通常、そういった技を行う際には、ある程度の力加減をして、あまり相手を痛めつけない様にします。

が、リョウ君は稽古相手になったお子さんを、厳しい表情で、親の仇のように締め上げました。

整列した時に、前に並んでいるお子さんを突っつくという、子どもらしい行為もよくしました。

整列している時に前のお子さんを突っつくのはいけませんので、「今は突っついたらダメ。自分の番まで待ってなさい」と教えます。

するとリョウ君は、黙ってうなずき、しばらく突っつかなくなります。が、また突っつくので、再度、教えます。すると突っつかなくなるのですが、一週間経つと、また突っつきます。

相手のお子さんを締め上げて痛めつけるのは、もちろんいけません。

手本は見せてありますし、技をかけて感覚も教えてありますから、「こら。そこまでやったら危ないだろ。わかるよな?」と問いかけ、「相手は練習させてくれてるんだから、痛めつけちゃダメ。わかったな」と教えます。

するとリョウ君は、黙ってうなずきます。

相手がおりますので、「じゃあ、ちゃんと謝りなさい。そうしたら許してくれるから」と促すと、リョウ君は「ごめんなさい」と謝ります。そして一旦、振る舞いを直します。

が、30分くらいすると、また相手を締め上げるので、再度、同じ様に教えます。すると、やはり直すのですが、一週間経つと、前の週と同様に、また相手を締め上げます。

一ヶ月経っても、リョウ君に変化は見られませんでした。

私は皆の様子を見ながら、どうしたものか考えましたが、リョウ君は、ご両親が離婚してまだ落ち着いていない感じだったので、まずは三ヶ月間くらい、目を離さない様にして、辛抱して教えてあげよう、と決めました。

二ヶ月が経ちました。

リョウ君に変化は見られませんでした。

当時、ダイスケ君という小学4年生の男の子がいました。ダイスケ君は、素直で元気なお子さんで、中学1年生のお姉さんと一緒に道場に通っていたのですが、リョウ君が入会して二ヶ月ほど経ったある日、ダイスケ君は、お姉さんとの練習の際に、フラストレーションを表に現しました。

お姉さんに、乱暴に技をかけるのです。

お姉さんが受け身を取りながら、「先生、ダイスケが乱暴です!」と言うので、私は彼らの元へ行き、「よし、交代しよう!」と、お姉さんと交代し、ダイスケ君の受け身をとりました。

するとダイスケ君は、だんだんニコニコして来まして、フラストレーションは解消されました。

リョウ君が入会してから、落ち着いて稽古が出来ていませんでしたし、私は皆を見ていましたが、それでも、リョウ君に多くの注意を払う事で、他のお子さんへの配慮は減少します。

それが皆を信頼しているからであっても、小学生のお子さんにしてみれば、その状況はやはり、フラストレーションになるでしょう。

三ヶ月が経ちました。

リョウ君は、他のお子さんたちと同様に、ちゃんと稽古をする様になりました。

私は毎回、教えますし、周囲のお子さんはちゃんと稽古をしますから、それがお手本になります。また、弟君と一緒に来ているお姉さんは面倒見が良いので、優しく話しかけてくれます。リョウ君は、少し笑う様にもなりました。

どうやら、上手く収まりそうでした。

が、そうはいきませんでした。

リョウ君がどうにか稽古できる様になると、リョウ君は、稽古を休む様になりました。

三週間とか、そのくらい休みます。久しぶりに来たリョウ君は、せっかく憶えた稽古の感覚をすっかり忘れて、厳しい表情で相手を締め上げるリョウ君に戻っていました。

リョウ君の稽古の感覚は、まだまだ、周囲の人からの借り物で、リョウ君のものになってはいません。ですから、休むと忘れてしまうのです。

それでも、2回くらい続けて稽古に来ると、リョウ君はどうにか、稽古の感覚を思い出します。が、思い出すとまた、しばらく稽古を休みます。そして、次に来た時には、最初のリョウ君に戻っています。

それを繰り返すので、リョウ君は、ちゃんと稽古のできる最低ラインに達する事が出来ません。

リョウ君は、お母さんが連れて来ます。

私は、もう少し続けて稽古に参加できないか、お母さんと会話をしようと思い、「もう少し来られませんか?」と至って普通に話しかけました。

するとお母さんは、やや、感情を乱されて、反論されました。それ以来、リョウ君は来なくなりました。

責めたりする事はありませんので、普通に会話をして、現実に向き合って頂く事が必要だったと思います。

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